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ミッドナイトダーリンを追いかけて、
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こないだ書いたやつ。いつもの書き方じゃだめだって、ふつうに書けって言われて、自分の中の熱いパッションをクールパッションにかえて、ふつうにかいてみた。心情のみ。エロはなしで淡々と。オチない。なんか、すげーつかれた。ふつうに思ったものだけ伝わるようにかくの、すごい疲れる。こんなの、たのしくない。不完全すぎて、つかれた。ちがうんだよ、そうじゃない、やっぱり自分らしくかかないとだめだ、頭柔らかく、こういうのかきたいで~すっていう感じでかくともう無理疲れる(云々)

れんときめも。





一ノ瀬トキヤから見る神宮寺レンの印象は、まさしく大衆が抱くそれであった。

ギャップが人を惹き付ける考えが往来する中、お約束を裏切らないことも大切である。神宮寺がそれを体現しているかどうかは分からない。だが一ノ瀬は客観的に神宮寺を見ていた。見る、というよりかは、具体的に、顔立ちどころか吐く言葉でさえも甘く、計算尽くしのスパイスを加える技術が仕草にも表れており、改めて魅力の加減が上手いのだと、半ば批評家のような立場で考察を行っていた節がある。実際それらは遠い答えではない。またそれらは、神宮寺の境遇から自然に身についたものだと言えよう。

初めて一ノ瀬が神宮寺に関して眉間を寄せたのは、月末の演奏試験の終わった直後だ。
学園の特質上、決して何からも解放されはいないといえども、テスト終了時というものはどうしてか緊張が緩む。エリート揃いのSクラスの中でさえ解放感溢れるムードに包まれ、自然と談笑が漏れていた。成績優秀の一ノ瀬も例外なく(気持ちばかりではあるが、)一息吐けたというのに、教室の片隅で頬杖を付きぼんやりと窓の外に視線を向ける神宮寺は、ただの一人リラックスした輪には馴染んでいなかった。まるで興味もなく、つまらないテレビ番組を眺めているようだ。違和感ばかりのそれが、疲労しているのだと察し、特に気にも留めず言葉もかけぬままその日はやり過ごす。

されど数か月間、同じクラスの仲間として、彼の演奏に耳を傾ける機会が増えると、時折見せる神宮寺の「疲労」の表情が多い事に気付く。また、そのタイミングも。
試しにその状態の彼に他愛もない会話を投げると、何事もなかったかのように普段通りの台詞が返ってくるのだ。隠している様子もない、かといってこれ見よがしに見せつけるわけでもない。恐らく、自分がどのような顔をしているのか、彼自身理解していないだけだ。確かに、小さな好奇心がきっかけであることは否めない。だが、一ノ瀬の視界の端に神宮寺が映れば、自然と追うようになっていた。これも考察の一環であるのかもしれない。それだけ、彼には惹き付ける力を持ち合わせていた。甘さが上手く溶ける、加減を。

ある日、神宮寺が窓の格子に手をかけていたので、一ノ瀬は反射的に引き留める。
神宮寺は驚くこともなく、落っこちたりしないさ、などと笑った。むしろ、一ノ瀬の方が驚きを隠せずに言葉で出なかった。指先は冷え切っており、わずかに震えている。勿論、飛び降りようとした様子さえないので、一ノ瀬の過剰な反応にも思える。だが、神宮寺は汲み取ることが出来るのだ。何事も無かったように、同じクラスの作曲家の女生徒についての会話を広げた。その自然さといえば非常にスマートで、一ノ瀬でさえ今のやりとりは己の白昼夢だったのかと疑問を抱くほどだ。空気を感じることに敏感な彼の扱いは、同じくらいに一ノ瀬にとって心地が良いものであった。憧れていたのかもしれない、と後になって一ノ瀬は思う。

一ノ瀬には、神宮寺のそれら一瞬の表情が疲労ではなく、孤独を感じているだろうサインであることを考察の延長で仮定した。
例えば、聖川真斗の凜とした佇まいであったり、一ノ瀬トキヤの圧倒的歌唱力等を見せつけられた時であったり、もっと端的に言えば、クラスのささやかな青春の一片であったとしても、神宮寺は目を細めて一歩引き下がる。何食わぬ顔で己と相手との距離を量り、自然と距離を置くのは彼の癖だと指摘した。悪く言えば、逃げにも近い。神宮寺自身が得ることが出来ないと諦め、一線を引きたがっていたのか。いや、手に入れられない時の虚無感を嫌う防御のようでもある。そのようなもどかしい様が、一ノ瀬には不器用に思えた。
また、それらを微塵も見せない印象であるから、余計に目が離せない。器用そうに何事もこなしてしまう。気持ち等、容易に奪ってしまえると傲慢に不敵に笑う彼に、一ノ瀬は少なからず惹かれていた。アイドル性があるとするのなら、こういった彼の魅力である。ふと瞬きすれば、急に一挙一動を理解したくなった。


神宮寺は気が付くとすぐに女性に声をかけ、甘く優しく愛を囁き、彼女たちの時間を埋めていく男だった。
一ノ瀬が抱いた感情は、嫉妬や羨望といった分かり易いものではない。そして、誰の為のものなのか、理解しがたいものだ。尊敬に値しないそれが、女性の扱いに関しては、手慣れたものだと純粋に感心する。そして一ノ瀬は、いつしか神宮寺が甘い笑顔を振りまく代わりに、誰も愛していないことに気付いてしまう。誰もが、彼の孤独を感じてはいないからだ。そして、刹那彼が見せるサインを感じ取っているのも、己だけであることも。一ノ瀬は、妙な征服欲に乱された。自分だけが知る彼の素顔は、酷く濃厚に、甘さを帯びている。自分だけが知っている寂しげな彼の姿を、自分だけのものにしたいと強く切望した。

「オイオイ、何かあったのか」
「特に何もありませんが」
「Bメロ、もう一度ってみろ」
「はい」
「……分かってると思うが、うちの学園は恋愛絶対禁止だからな」
「何を今更」

ヘッドフォンから届く教師の言葉に辟易の表情を浮かべてみせた。一ノ瀬が息を吸い込み、ゆっくりと紡ぎだす愛のビブラートの向かう先が誰へ宛てたものであるのかは、スタジオ内の誰も知る術がない。甘く切ない心情が浮き立ち音符として弾け飛んだ。一つ一つ丁寧に五線譜を撫でる。自然と漏れるように、唇から零れていく。ガラスに手をついて、己がどのような顔をしているかもわからぬまま、神宮寺は息を飲んだ。そうしていたのは神宮寺だけではなかったが。その他大勢のギャラリーの一部へと紛れ込んだ彼にとって、一ノ瀬トキヤは、遠い存在だ。

「噂には聞いていたけど、凄いね」
「主語がありませんよ」
「ここのところイッチーがすごくセクシーだって、レディたちが騒いでいたんだよ」

スタジオから出てきた一ノ瀬を呼び止める声に、彼は平常を保って対応する。思わず漏らしてしまいそうになる台詞をぐっと喉の奥で押し込め、至ってつまらない表情で返す。神宮寺にとってもそれは想定内であり、まさか自分が彼にとってのきっかけであるとは考えには至らない。また、彼にいつも向けられていた女生徒からの感嘆の溜息の行き先が、この時ばかりは神宮寺にあてられたものではなかったことを神宮寺は理解している。
神宮寺の会話を一ノ瀬が適当に流すことは出来ても、その後が問題であった。禁句を零す喉や、揺さぶられる感情が表れた唇や、触れ合っただけで止まる視線に、意識を向けるのが精一杯で、まるで神宮寺の表情には注意を逸らしていた。一ノ瀬の目の前で佇む彼は笑っているにも関わらず、今にも泣き出してしまいそうだった。一ノ瀬の肋骨の下で急に熱を帯びる。ふつふつと湧き上がった熱い征服欲が下唇を噛んだとて抑えきれずに唇からゆるりと溢れ、次の行動へと流転する。再び、眉間にしわを寄せた。

「何が気に障ったのか分からないけど喧嘩かい」
「つべこべ言わずに来なさい」

乱暴に手を取って廊下を突き進む。歩幅は大きく、端から見れば神宮寺の言葉の通りのようにも思える。満点にも近いレコーディングの後だ。クラスメイトは動揺の声で二人を送る。その腕を拒もうと思えば、神宮寺ならいくらでも拒めた。つまり、彼にとって、一ノ瀬の咄嗟の行動は興味深かったことが伺える。その証拠に、口元には笑みが残されていた。

一ノ瀬が感情に任せて向かった先は、陽の光がよく差し込む資料室だ。元々この教室は音楽室を物置として改造したこともあり、鍵さえかけてしまえば室内の音は一切漏れることはない。また、利用頻度は低く、学内のイベント時に思い出したように使用される。誰の目からも触れることなく二人きりになるのなら、この部屋だと一ノ瀬は頭の中で選択していた。

「はあ…、レディにも拉致された事はないんだけどな」
「今から私のことは空気とでも思って下さい」
「………、空気に驚かせる日が来るとはね」
「……」
「密室なんて素敵なシチュエーションで男からハグされたのは初めてだよ」

ここで初めて神宮寺が動揺した。
思わず抱擁してしまったという事故的要素は全くない。一ノ瀬がここまで自分を引き連れ、密室を作り出した上、改めて抱擁するのだから、一ノ瀬が己に向けた感情は、非情に疑い深いものであった。しかし、なおも彼は拒むことはない。(かといって、抱き締め返すこともしなかったが。)それどころか、理由さえも尋ねようとはしなかった。ただ、静かに二人の時間が過ぎていく。二三、言葉を放ったかもしれない。一ノ瀬はどれも回答しなかった。時々、身じろぐように額をこすり合わせたり、背中に回した腕に力を入れたり、吐息や鼓動が敏感に伝わるだけだ。

太陽も傾き始めた頃、神宮寺がいつも通りの落ち着きを取り戻し、己の状況を再確認すると一つ深い溜息を吐き、己を取り纏う空気という名の一ノ瀬を眺めた。
しっかりと神宮寺へ縋るようにしてしがみ付き、飽きぬのかずっとそうしている。表情は伺えずとも、恐らく顔立ちは美しく整っているのだろうと半ば他人事のように思えば、神宮寺も気持ちに区切りが付き、自然と彼の髪へと触れた。隅々まで手入れの行く髪は柔らかく、神宮寺の指を楽しませる。一ノ瀬は身体を跳ねさせ、空気というにはあまりにお粗末な反応を見せたので、思わず神宮寺の方から吹きだした。

「空気だと言ったでしょう」
「空気だったら空気らしくしていたらどうだい」
「…拒まないのですか」
「拒んで欲しいの」
 
「いいえ」
 
一ノ瀬がようやく顔を上げると、神宮寺の瞳と視線がぶつかる。神宮寺の取り巻きから彼自身が聞いた噂通り、一ノ瀬に昔はなかった色気がこれでもかと惜しげもなく溢れ出ていた。そこに触れてしまえば消えてなくなってしまいそうで、唾を飲み込むには時間がかかる。特に唇には目を奪われた。先程まで、歌に乗せて熱情を吐き出していたそれは、神宮寺の視線を射止めるには十分な品物である。だが、触れはしなかった。お互い、それ以上は繋がることがない。どちらかの牽制かはお互い分からないが、言葉には出さぬ約束事のように、まるで神宮寺が裏切らなかった印象のように、弛々と時が流れる。帰りはあっさりと一ノ瀬が離れ、そろそろ次の授業ですよ、と神宮寺に投げかける。神宮寺も、いつもの様子で微笑みで返した。

一ノ瀬は時間を工面した。
それらの多くは例の資料室で行われていたが、実際は学内の至るところで交わされ、徐々に一瞬でも構わないものになる。触れることができるのなら、髪でも爪でも、どこでもよかった。一ノ瀬から神宮寺に抱擁を求め、神宮寺はそれに応えるように黙って髪を撫でる。それ以上、特別なことは何もない。他愛のない会話もない。空気である時間が二人を包む。

いつの間にか、こればかりは神宮寺も無意識なのだが、一ノ瀬言う孤独を感じた時、真っ先に神宮寺は一ノ瀬を頼るようになった。ぼんやりと窓の外を見つめることと同じように、肩に寄り添う。その温もりは心地のよいもので、神宮寺の表情を和らげた。一ノ瀬も黙ってそれに応える。いつ、どんなとき、などと約束したわけではないのに、決まって彼にとっての不安定な時、いつも傍に互いがいた。

「レン、そろそろ時間ですよ」
「…ああ、」
「早く行ってください」
「あと少し」

大きな猫のように頬を摺り寄せる。目を細めて愛らしいと告げる代わりに、頭を撫でた。これが、愛情なのだと初めて自覚する。思わず告げてしまいそうになった。まるで恋人のように抱擁を繰り返していたので、錯覚したのだ。熱に浮かされた瞳で見つめて、それ以上を欲しがる。だが一ノ瀬は、その言葉を漏らしてはいけないことを知っていた。告げればすぐに、この関係が失われるのだ。実際一ノ瀬は賢かった。神宮寺に依存されて初めて愛を感じることが出来ると理解している。それ以上に、何もいらないと自分に言い聞かせる。だから、極めて都合の良い存在に成り果てた。空気のように、安心させてやりたいと慈愛の表情を浮かべる。離れてようやく、その身の寂しさに気付いた。

いつしか、時間を告げるのは一ノ瀬の役目となった。一ノ瀬がその刻を伝えねば、神宮寺はいつまでもそうしていた。
初めは、神宮寺の印象を覆す表情を楽しむだけでよかった。次に、それを知っている己への優越感に浸った。そして、個体へと依存した。最後に、欲が出た。手に入れたこと等、一度もないというのに、身を焦がす思いばかりをしていた。一ノ瀬が終了の合図を告げれば、神宮寺は何事もなかったかのようにふるまう。それが憎たらしいと不快に思ったに違いない。されど、神宮寺にとっても、同じだとは一ノ瀬は気付くはずもなかった。何せ、神宮寺はそうやって本心を誰かに伝えることをもっとも苦手とするのだから。

「まだ足りない」
「困るのは貴方でしょう」
「イッチーの匂い、安心する」
「残り香が、」
「ん?」
「なんでもありません」

キスをしたいと思った。抱き締めた空気以上に互いに触れることはなかったから。一ノ瀬の頬を撫でる。頭を撫でる。頬をその大きな手の平へと擦り付け、もっとと強請る。抱き締めて、お互いの匂いをいっぱいに体で感じる。それだけで、と一ノ瀬は言い聞かせた。それ以上、神宮寺は踏み込めなかった。太陽が傾くと、深くまで繋がりそうな距離が、ぐっと引き離された。

「デートの時間なんでしょう」
「…ん…断るよ」
「は?貴方が大好きなレディですよ」
「俺が大好きなのはイッチーだって、いい加減わかってるだろ」

ほら、甘い。一ノ瀬は泣きそうになる。キスさえも経験はなかった。その言葉はどんなに切望しても、自分が告げられるものではなかったからだ。耳鳴りが続くので、顔を顰める。一ノ瀬の感情など無視して、神宮寺は易々と手慣れたように頬へと口付ける。契約違反だ、とさえ罵りそうになったが、その言葉さえも飲み込んでしまう。なぜなら、契約などしたことはないからだ。ただ、都合が良ければいいと互いの暗黙の了解であり、それは一ノ瀬にとって幸福な都合であった。

「…これ以上優しくしないでください。勘違いしそうになる。」
「いいよ、それは勘違いじゃない」
「私は、あくまであなたの空気であって、」
「空気が無くては生きていけないよ」
「だから、つまり、」

その先の言葉を煩わしく思ったのか塞ぐようにして唇を重ねた。一ノ瀬にとっての初めての口付けは、苦しいほど甘くて喚きそうになった。どこに手を置けばいいか、どの角度が最も舌を絡められるか、幼い頃から演技に励んでいた為、頭では理解していた。しかし実際は、何も出来ずに神宮寺のされるがままとなる。身体を許している最中、一ノ瀬は神宮寺について、様々な事を考えていた。新たな情報により、昔の寂しげな表情を忘れてしまわぬように。そして、互いをさらに深くまで求めあえるように。涙が溢れても神宮寺の舌がすべて拭ってしまったので、代わりに、神宮寺の頬をキスで濡らした。

「あなたは、ずるい」
 
もう一度同じ台詞を、今度は自分に向けて告げた。

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