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ミッドナイトダーリンを追いかけて、
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メメメメモ


 
プロット1

空一面に降り注ぐ流星を、瞬きも忘れて見上げた。

どこの国の街の事だか忘れたけれど、あの父親が珍しく連れて来てくれたことだけは覚えている。
ジョージの手を必死で握りしめて、紺色のビロードに零した宝石のような輝きに息を飲む。何を言葉にしたか、見事にその他の情報は抜け落ちている。その光景だけが、写真で留めたような鮮明なる記憶だ。今考えると、もしかしたら夢だったのかも、頭で描いた空想なのかもしれない。証拠は残っていない(カワイソウな幼き少年の頭の中の話だという事実を突きつけられるには、…ねえ?)

ただ、幼いオレは純粋に、また父親と、家族と、この場に来たいと思っていた。


もう一度、夢のような星屑が降り注いだのは、空の低い都会の夕暮れでのこと。

葬儀は2週間前のことだというのに息の詰まるような親族集会の日々はなおも続いていた。お役御免の頃合いを見て抜け出した日本の雑踏は酷く安心する。誰もが神宮寺レンには興味がないと囁いているようで。人の声を交差させ乱雑に切り開くモノクロは点滅で急かす。障害物を潜り抜けると時折、ファーストネームの甘い匂いに振り返る蜜蜂ちゃんは居たけれど、警告色たちに別れを告げてキスをした。

その日オレは高校を辞めた。
年上のレディが、オレと結婚してくれるのだと言う。素敵だと思った。最も不要なものを捨てられる方法が呆気なく見つかった。それだけではない、欲しかったものまで与えてくれるようだ。恋愛の極地ともいえるその手段で手に入れた方法が、オレには嬉しかった。恋をしていたかと尋ねられると弱るが、それは過程であってオレにとっては興味のないこと。高校を辞めた理由の一つであっても、いくつもある中の、ほんの些細な粉塵であって、つまりね、レディ。オレは、約束の時間を2時間過ぎても、待ち合わせ場所には現れないことに、安心していたのかもしれなんだ。

その間にも何度か出会いのきっかけとなる声は耳に飛び込んで来たのだけれど、求めていたものではなかった。当然とでもいうようにレディとの関係はのろのろと届いた電子的な一文で終了した。オレが捨てたがっていたものが、彼女にとっては最も魅かれている要因であったのだ。

世界はあまり優しくないみたい。
次に触れた蜜蜂ちゃんには特別な運命を感じるから、素敵な蜜をレディ好みに仕立ててプレゼントをしてあげよう。まだ見知らぬ君へと思いを馳せて、片手の中の別れの言葉を暗転させたら、自然に笑みが零れた。一緒に連れ添った色鮮やかな花束が心なしか慰めているようだ。そんな顔をしないで、君はきっと特別な想いに昇華させてあげるから。

寄り掛かっていたガードレールから腰を浮かせ一歩踏み出すと、突如として、星屑の粒が、降り注ぐ。

瞬きするのも忘れて、見上げた。
光の粒子たちが散りばめられて、音になって溢れていく。

求めていた声は、最初からこれなのではなかっただろうかと錯覚するほどに、強い眩暈がした。

「は、はは、…!」

指先まで興奮で震えていた。
オレに興味のない人々が、立ち尽くしたオレを今更疎もうが構わない。見上げた流星群に見惚れないわけがないだろう。
画面を指さし、品の悪くない服装のレディに声をかけた。行先は決まっているだろう履きなれたパンプスが狼狽し、瞳が揺れる。きっと今のオレも、そんな感じ。

「ねえ、レディ。あの子なんていうんだい?」
「え?…HAYATO?…HAYATOで、すけど…」

「Bravissimo!HAYATO!!」

他のレディのことを考えて作った花束で忍びないけれど、今のオレの右手にはこれしかない。
リボンをほどいて思い切り空へと手向ける。モノクロの世界に眩むほどの星屑を見せてくれたお礼、にはならないかな。星屑は華やかな色に代わって、オレの体に全部降り注いだ。

君に出会えたら、星屑以上の花束を贈ろう。

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