広いお空の上のひとつに、サディスティック星という、わくせいがありました。
この星は、たいへんちいさく、たいへんうつくしく、地球をおびかすほどの凶器と狂気がたいへんうずまいています。
その星に、たいへんかわいらしい、おさないサディストの王子様がいました。
王子様は、おひるねがだいすきです。それと、おかしをたべるのがだいすきです。それとそれと、人をいたぶることもだいすきでした。
もっとだいすきなのは、こんどうさんと、あねうえでした。
こんどうさんはおおきな手で王子様をたくさん抱っこしました。
王子様はこんどうさんがとってもとっても、だいすきです。ちょっとゴリラににているけれど。
あねうえは、やさしい手で王子様の頭をたくさんなでました。
王子様はあねうえがとってもとっても、だいすきでした。ちょっと辛いものがすきだけれど。
そんなとき、ほかの星からとってもぶさいくでとってもぶあいそうな男がやってきました。
ぼろっちくなっていたのを、こんどうさんがうっかり、ひろってきてしまったのです。なにをやっているんだ!こんどうさん!
その男はひじかたといいました。なんともはらのたつなまえです。
王子様はひじかたが、だいきらいでした。死ねばいいのに。
ひじかたはふてぶてしく、こんどうさんをひとりじめしました。
こんどうさんはたくさん、ひじかたのはなしをします。王子様は不機嫌になりました。
つぎにひじかたは、あねうえにいろめをつかいました。
ふたりの目があうと、あねうえの頬がほんのりあかくなって、ひじかたの耳があかくなったのを王子様はみました。王子様はおもしろくありません。
でも王子様はおとなだったので、ぐっとがまんしました。
王子様にお友達はいませんでした。
自分の命をまもるけんと、自分を支える大地、だいすきなこんどうさん、それとあねうえだけでした。
ひじかたは必要ありません。いりません。死ねひじかた。
それから、ひじかたにたくさんいたずらをしました。
ひじかたのきものに犬のうんこをのせたり、ひじかたの刀に犬のうんこをのせたり、ひじかたに犬のうんこをのせたりしました。
いつもひじかたは怒りますが、それでもひじかたは星からでていく様子はありません。
ひじかたはぶさいくで、むかつくやつでした。
それでもただ、黒いその髪は美しかったのです。男のくせに。
ある日、こんどうさんがちきゅうへいこうといいました。
王子様は国のえらい人なので、たいへん困惑しました。
こんどうさんとゆかいななかまたちはみんなちきゅうにいくそうです。もちろん、ひじかたも。
あねうえは、いけませんでした。
地球の空気はあねうえにあわないのと、男しかできないことをするためです。
サディスティック星の王子はきめました。こんどうさんについていく、と。
さいごの日、あねうえは王子様にキスをしました。
王子様は目からぽろぽろと水でます。
その日、サディスティック星では雨ということになりました。
王子様は泣いてなんかないからです。ひじかたはあねうえのようにあたまをなでました。
おもえば、こいつがきてからいろいろかわったのです。とっとと殺してやろうと思いました。
地球はとってもすみにくいところでした。
でもあまいものがおいしいです。へんなやつもいっぱいいます。王子様はすぐに地球が気に入りました。
地球にはいたぶるべきかちくがたくさんいるからです。
そして王子様は、ここで王子様じゃなくなりました。
しばらくの月日がたちました。
こんどうさんと、王子様、それとひじかたはしんせんぐみというあたらしいそしきをつくりました。
そこでのせいかつは星にいるときよりずっとたのしく、ずっとくるしいものでした。
王子様もすっかり大きくなり、もう18さいになりました。もうえっちも許される年齢です。
王子様はいつか土方を殺そうとしました。
でも殺せません。どうしてでしょう、殺せないのです。
いっぱい命を狙っているのに、土方はなかなか死にません。
そして大好きだった姉上が死んだ日、王子様は気付いてしまいます。
そう、ずっとずっと殺したかったのに殺せなくなってしまったのです。たいへんだ!
「総悟」
土方は王子様の名前をよびます。
「雨、降ってるから中はいれ」
今日は雨です。どしゃぶりの雨がふっていました。
星が美しい夜空には、あねうえがいるのでしょうか。
土方は煙草をすいます。その煙がたかくのぼるのを、雨の中王子様はみていました。
星が、とてもきれいです。
ひじかたを、ころしたいな、と王子様はおもいました。
おしまい。