何故か爆発して書いた。こうだったらいいのにな。
基本的に口調は創作。だってレミリアにだよとかだねぇとかあんまり似合わない気がするんだけd公式^^
レミリア(+フラン)×咲夜さん。
「お嬢様、お茶の時間です」
銀の懐中時計をぱたんと閉じてから扉越しに声をかけた。
針はきっかり3時を指し、秒針までもが天井を向いている。
1日に2度のお茶の時間は一秒も狂わない。狂わせない。
片手でも簡単に開きそれでいて強固な扉をゆっくり音を立てずに押し開く。
私の姿を一瞥した私の主人は椅子に深く腰掛けながらクスクスと笑い声を上げた。
「あらあら咲夜ったら」
「…これは、大変失礼致しました」
「おいで咲夜」
「ですが」
「いらっしゃい」
吸血鬼が住むと言われた島は昼間から霧に覆われており、幼い私の体に恐怖を刻み込むには十分だった。
道のりから、館にいたるまで紅で統一された館にたどり着くまでに多少のダメージは致し方ない。それでもようやく此処まで来たのだ。
母も父もいない私が一人で食べていくには、命をかけなければならなかった。幻想卿の吸血鬼を捕らえ続けてきた私にとっては、それは仕事というよりライフワークだったと言っても良い。十分に下準備をすること2週間、絶好の捕獲ポイントと日時を探し出す。
館の吸血鬼は1体と確認していたが、ターゲットが明確ではなかった。なぜなら私よりもずっと幼い少女が、まさか本当にスカーレットデビルなのかと疑惑を抱いていたからだ。しかし、その命を掌握することが出来るのならどちらでも構いはしなかった。
計画通りの満月の夜、館から出るタイミングを見計らい、私は時を止める。
最も吸血鬼たちが興奮するその日、私はようやくその幼い首元に刃物を突きつけた。
「あなたのその時計、少し狂っているようね」
静かに囁いたその言葉は私の時を止めた。
風の音一つ聞こえぬ庭先で、口端をニィと吊り上げ鋭い犬歯を見せる目の前の相手に、ナイフを持つ手が震える。
咄嗟に間合いを取り、予備用の銃を構えているにもかかわらず、目の前の少女からは殺気を全く感じない。相手の意図が分からず、このまま一度退却することを考え足を踏み出そうとした時、その少女は私ににっこりと笑いかけた。
「貴方を私の館に招待するわ」
淡いピンク色の洋服からは似つかわしくない、背中から生えるこうもりの羽をパタ、と一度だけはためかせ、少女はたった今出てきた館へと戻っていく。これは罠だろうか、そうに違いない。幻想卿の吸血鬼は血を吸うだけではない、その人間を貪り食うのだ。思い出したというように、紅魔館の時計台が12時を伝える鐘をここら一帯に鳴り響かせた。
「いらっしゃい」
「…わ、罠に、…みすみす引っかかりにいくわけないでしょ」
「これだから物分りの悪い人間は嫌いよ、そんなぼろぼろの人間までハイエナみたいに食べると思っているの?ああ、あとその銃で狙うのもやめてくれるかしら。気分が悪いわ。」
それは本当に鬱陶しいというような表情で、こんなことを言うのもおかしいけれど、敵意はまるで見えなかった。
私は意を決したように唾を飲み込み、銃を下ろした。汗ばむ手の中でそのトリガーに指を絡ませたまま、館の主の後ろに続くように震える足を踏み出した。開かれたままの扉は自然と閉まり、私の背筋を凍らす。それさえも気にしない様子で幼い主はすたすたと紅いカーペットの上を歩いていく。洋館の外観と同じく紅を基調とした室内は暗く、満月の夜だというのにその月でさえ不気味に感じた。それは鼻を刺す錆付き吐き気をもよおす匂いも原因の一つであろう。
案内したいと思われる一室の扉の前に立ち、両手で一生懸命開こうとする姿を見遣り私は反射的に手を差し伸べる。
見かけほど重さを持った古めかしい扉は、見るからに少女の力では辛いと思える。先ほどまで命を狙っていた相手に、ありがとうと返されるのは些か妙な感覚だった。ただ、彼女の好意の微笑みは不敵としか言えないのだが。
「おかけになって」
「何が目的?」
「せっかちな人間。ああでもそれを真面目というのかしら」
「だから何だというの」
客間と言える小さな室内は全くといっていいほど生活観のかけらもないが高級そうな装飾に彩られている。最低限光の無い部屋に警戒している私は小さな蝋燭の飾台の近くへと佇んだ。先に紅色の椅子に腰掛た少女に、対面するような形で席を勧められたが、やはり私は座ることをせず、相手に問いかける。
「あなたはとても強い吸血鬼ハンターなんでしょう?」
「ええ、だから私はアンタを狩りに来たのよ」
「あなたも吸血鬼の永遠の命が欲しい?」
「そんなのいらないわよ、ただアンタを殺して突き出したら私は食べるものがもらえるの。寝るところもよ。」
「なら私があなたに食べるものも寝るところも与えてあげるわ」
座ったばかりの椅子から立ち上がり、ゆっくりと私のほうへと近づく。
徐々に失いかけた緊張を取り戻し、後ずさりすると飾台の蝋燭が揺らめいた。背中が凍えた次は燃えるように熱い。ああやはり、こんな場所へ足を踏み入れるのではなかった!私は後悔の嵐の中、改めて銀の鉛の入った銃を突きつけた。そして、驚くほど白く細い腕でその銃口を掴み、囁く。
「私に服従なさい」
話をよく聞けば、この屋敷の掃除係が全くの無能で人手を欲していたということらしい。あくまで私は人間で、吸血鬼ハンターであることをしっかりと伝えたが、彼女は楽しそうに、その位強くなくちゃうちのメイドは務まらないのと笑う。どこをどう考えても、うまい話であるのだ。上手く誘いこまれたようにしか思えない。食事と寝床が常に与えられる…つまり、家が持てるというのなら、私は喜んでその仕事をこなすだろう。
「だってあなた、考えてもごらんなさいよ。客人として招き入れたのにお茶の一つ運ばれてこない屋敷が誇り高いと思える?」
「……、でも」
「この館に"訪れることが出来る"とても強い人間なら尚更。私はあなたが欲しいの。それに、吸血鬼なんてもう数少ないわ。あなたの仕事は廃業、ね?困るでしょう?うちの館で働きなさいな」
私は、それこそ悪魔の囁きに静かに頷いた。
断る理由なんて初めからないのだ。人ならざるものにだけれど、他の対象物から自分という存在を求められている。
まるで遊ばれているように腕を引かれ、紅い椅子に座らせられる。私が大人しくそのすわり心地の良い椅子に体を預けると、少女はワンピースのポケットから銀色の懐中時計を差し出して、私の銃と引き換えにそれを手の中に落とす。
「紅魔館のメイドたるもの時間に正確でなくてはね」
「……こんな、高価なもの」
「あら、いいのよ。今日から私が教育してあげるからね。まずお茶の時間のことだけれど…」
まるで新しい友達が一人増えたかのような口調で喜々とする少女は、その黒い羽と鋭い犬歯さえなければ、ただの愛らしい少女であることに気付いた(いや、それにしたって欠陥品なのだろう。私と同じくして?)。少女は喉の一つ渇かないのか、仕事の内容を早口で私に説明し、私はそれを一つ一つ租借した。もしかしたら、此処では命を懸けずに生活をしなくても良いのかもしれない、あるいは、この少女のために命を預けることになるのだろうか。
私が改めてその少女の燃える紅色の瞳を覗くと、ああ、と少女は一歩私から離れ、愛らしい微笑みのまま腕を差し伸べた。
「私はレミリア・スカーレット。この館の主人よ」
「私は……」
「咲夜」
「…え?」
「名前がないのならあなたは今日から咲夜と名乗りなさい」
どうして私に名前がないことを、彼女は知っていたのだろう。
いや、それよりも、自分に与えられた名前に私は酷く満ち溢れた幸福感を覚えた。
窓の外の満月が暗い部屋を照らし、柔らかにその幸福の輪郭をなぞる。そして、気付いてしまった。既に慣れてしまった嗅覚のせいであろうか。
この部屋の紅は、すべて人間の血であることに。
「いい?咲夜。明日までに全ての部屋の掃除をしなさい」
「これは掃除が大変そう…」
「ちゃんと隅々までするのよ、いいわね」
「レミリア…、お嬢様」
「なあに咲夜」
少女は私を咲夜と呼ぶ。
それは、私のことで、私の存在で、私を必要とする。名を呼べば、私を呼ぶ。
私に相応しい場所は椅子ではなく、この紅色の床でなのだ。懐中時計を首からかけ、その白い腕に触れることに許可をいただく。
私はそれを取りながら跪き、その冷たい甲に口付けを落とした。
「十六夜 咲夜。もう一度言うわ」
「貴方に忠誠を誓います」
「あなたはこの紅魔館の夜に咲くことを許された満月、さあ私に服従しなさい」
そしてその愛らしい唇から覗く牙を、私の首筋に与えられた名前と共に埋め込んだ。
「フランお嬢様、せっかく淹れた紅茶が冷めてしまいますよ」
「だってこっちのが美味しい咲夜」
ケーキを作っている際にエプロンの端に肉片を零してしまった。それはエプロンから零れ、スカートの裾を濡らし、太ももにまで及んでいる。そんなことにさえ気付かずにいたなんて、メイド長失格ではないだろうか。椅子から身を乗り出しながら太ももを這うフランお嬢様の舌に体を震わせつつ、そんな風に落ち込んでいた。その様子に気付いたのか、レミリアお嬢様は指ですくった生クリームを舐めながら調教しなおさなきゃねと告げる。
「フラン、あまりそうしているとそのうち」
「っ…ん…」
「ほら言わんこっちゃない、吸っちゃダメよ」
フランお嬢様は床に座ってと促したが、それではフランお嬢様が家畜のように床にひざを付かなくなるではないか。それは椅子に私が座っても同じことで、少々下品ではあるが、椅子をお借りして自らの片足を持ち上げるほか無い。フランお嬢様の牙はレミリアお嬢様のそれよりも強く深くえぐる。本人もある程度は丁寧に舐めている様子ではあったが、最終的に私の太ももの内側から二つの痕が付いた。そして、零れる紅い血は彼女の空腹を満たしていく。
「ごめん咲夜、痛い?大丈夫?」
「ケーキはお預けですからね」
「やだあ!まだおなかがすいてるの!足りないの!食べたい食べたい!」
レミリアお嬢様が口直しといわんばかりの紅茶のティーカップをかちゃんとソーサーに戻しため息をついた。
咲夜、と私を呼ぶ声は未だに私の心を熱くさせる。それこそ、この紅へと溶けていくように。
「私も少しおなかがへったわ。食べさせなさい」
リボンとブラウスのボタンに解放を宿し、もうあの時よりはずっと長くなった髪が邪魔にならぬようかきあげる。
そこに何があるかは私にはわからない。今が既にどうなっているのか。
いくらか部屋の空間をゆがませ、更にお嬢様たちが心地よさを考えたこの館は甘いケーキや香り高い紅茶葉の匂いで薄汚い黒を払拭させている。光は、未だに良くは入らない。白く透明な肌は、今もまだ美しい。私に許されたことといえば、その手に許可なく触れられるということ。
重たい扉は館の入り口だけで、彼女たちを煩わせる邪魔な存在は全て掃除してきた。
それでも足りない、私に与えられた名前に代わるものなどない。返し切れていない。それどころか、私は愚かにも求めている。
「お嬢様…もっと、強く、吸っても大丈夫ですよ…」
「こないだみたいに倒れられても困るのよ。それに…ああフランってば、アンタは吸っちゃダメだっていってるでしょう」
「だって咲夜はこっちのほうが喜ぶんだもん!」
私から与えられるのなら、私の体をめぐる最後の一滴まで。
懐中時計の針の音は全く聞こえない。このときばかりは永遠で。
あと5時間後のお茶の時間に遅れぬ様に。
つかれたーーーーーーーー!!
久々に話を完結させた気がするーーえ、ギャグですけど何か問題がございますでしょうか。
ずっと書きたい奴だったからうれいしいいーーーそしてどうしてひじきじゃないんだ。
あれ、そつろんは?なにこのじかん。