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ミッドナイトダーリンを追いかけて、
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まえ、憂鬱×変態をかいてて、続きかこうとおもったのに、半年近く忘れてた。短いポエムなら別に何も考えなくてもかけるものなのだな。

雨×紫陽花


俺たちが同棲を初めて、2年が経過しようとしていた。いつものように、ただいまと帰宅を示す声をかけながら、靴を脱ぎ捨てる。靴は何足分も乱雑に置かれているが、9割が俺のものだ。帰りを迎え入れる、おかえり、ごはんできてるよ、おふろにはいるか、それとも、な~んて甘い言葉がかかってくることは、まずない。もちろん求めているけれど、彼が応えてくれるはずもない。もう期待してない、とか、言えたらいいのに。
必要最低限の電気だってついてはいない。俺を受け入れる気力が皆無な部屋を押しのけて、リビングの電気を自ら灯した。当然といえば当然なのだが、俺の求める姿は、ない。ジャケットを脱いでは定位置であるソファへと放り、厳重に施錠の行われている部屋のロックを一つ一つ解除していく。パスワードは、すべて手で覚えていた。習慣というのは、恐ろしいものだ。

「今日の飯さー、リクエストあるー?おばちゃんにじゃがいもいっぱいもらったんだよねー。ほくほくおじゃがー。やっぱり明太子と一緒にじゃがバターでしょーかー。あ、いっけね、バター無塩しかねえわ。じゃがじゃがは明日なー。冷蔵庫ん中の野菜どーすっかなー。いっそ鍋っちゃう?やっちゃう?つーか何食いたい?何の気分?洋?中?和?って、インスタント食いすぎてもしかして食えねぇとかいっちゃう?」


ドアを開ければ、部屋の中からむっとした空気が頬を包み込む。真冬だというのに、この生ぬるさは不思議でしょうがない。暗闇の奥のほうで、パソコンのディスプレイのみが煌々とした明るさを放っている。真っ暗闇の中で、影がうごめく。愛しき彼の姿である。伸びた黒髪が闇に溶けて、重たい眼鏡がだらしない。そういうとこでさえ可愛くって仕方がないと思う。

今日もかわいいかわいい、すごくかわいい!ようやく目が慣れてくると、予想通り足元にはインスタントの残骸が転がっていた。これで、肥満とは縁遠い体つきも、彼の驚くべきところだ。

「邪魔をするな」
「こんなのより俺のがおいしいよ。こうみえて昔は料理人を目指してたんだぜー。炎のー。あ、それとも風呂にする?頭洗うよ。それとも切っちゃう?ばっさりやっちゃう?」
「ウザい。いい加減にしろ。死んでしまえ」
「俺無性にスープスパ食いてーわ。そうしよう。うん、それがいい。腹減ったもの」

ネトゲのレベル上げに必死な姿も嫌いじゃないのだけど、偶には最初から構ってくれたってバチは当たらないのではなかろうか。部屋の電気をようやく灯すと、お決まりの罵声が飛んできた。まぶしいだとか、節電だとか、汚いとか諸々。最後のそれは、お前が悪いと言いたくなるが、その一方的な攻撃に対抗する隙はない。さて、俺を疎み罵るばかりの彼が俺にべた惚れしているなど、誰が思うだろう。
BGMにしている金きり声の女の子のボーカルは、俺も知っている。彼はその女の子が大好きなのだ。部屋にはその子の形を模したもので溢れかえっているし、俺もその子のコスプレで跨ったらもっと構ってくれるかと頑張ってみたんだけど、汚すなと今までで生きてきて一番罵られたから、なかったことにしている(いやあ、あれは、ほんとにひどかったなあ)その子で埋め尽くされた部屋は、半日で足の踏み場がなくなってしまう部屋に入れ替わる。いやはや、どれがゴミで、どれがお宝か、俺には判断がつかない。

ひとまずゴミ袋片手に、確実にゴミだと思えるものの回収を始めた。ティッシュは積極的に俺の手で捨てるようにする。もしかすると、大事なものかもしれないし。その間もずっと、俺の背には冷たい声が降り注いでいた。それでも、彼は俺が好きで好きで仕方ないのだ。掃除は手早く、完璧に行わねばならない。なぜなら、俺には料理を作る・風呂にいれる・しっかり寝かしつける、というクエストが3つもあるからだ。今朝かけたばかりの部屋に掃除機をかければ、部屋はある程度片付いてしまう。わざとらしく汚す割に、それはたまった汚れではない。あと、俺にはゴミだと思うそれは、大切に彼がとっているので、ゴミではないのだ。ここらへんが難しいところ。

「ようし、ちゃっちゃとたったっと準備するから、レベル上げのキリのいいところでリビングにおいで~」

「嫌だ。誰が行くか。お前の料理おいしくない。おいしくないのに、お前の仕事場の仲間には好評みたいだったじゃないか。おもしろくない。死んでしまえばいい。」

「え?俺が愛情をかけて料理するのはお前にだけだよ、そんなの当たり前じゃないか」

「嘘だ。この間だって、そういってお前は仕事を優先させたのだ。気に食わない。死ね。」

「いつだって俺はお前が優先だよ」


間抜けなレベルアップの効果音が流れてから、ようやく彼は俺へと視線を向けた。まぶしそうに目を細めて、ゆっくりと俺に近づいて抱擁を求める。俺はそれに応えてやりたい。拒む理由なんてない。風呂なんてあとででいい。ドロドロになっちまうし、問題は全然。むしろ簡単、彼が俺を想う以上に、俺は彼に惹かれているから問題ない。安心させようと、子供のように背を何度か叩いてやると、冷たい指先が俺の頬へと触れ、すぐに唇へと向かう。距離さえも埋めるキスは少しだけ苦しい。子供とは言い難い下腹部に渦巻いた欲を擦り付けられながら、噛り付くように唇を重ね、ねっとりと咥内が浸食されていった。舌の裏側はサイダーの味。はじけそうだ。俺だけにしか、向けることのない欲望に身を委ね、きれいにしたばかりのフローリングに背を縫われる。

「お前がどこにもいけないようにこの部屋に爆弾を仕掛けた」
「それは陰湿だ!」
「パスワード一つ目は、俺の名前。二つ目は、お前が世界で一番愛している相手の名前。三つ目は、お前の欲しがってる相手の名前だ。」
「パスワードが全部一緒ってのも、困ると思うぜ」

引き籠りの彼がどこで覚えたのか、キスの実践もセックスの実践も、平均以上に上手い。どこが俺の性感帯で、どこが俺の弱点か、見極めてきめ細やかな作業で行ってしまう。きっとこの観察眼はRPGを最速でクリアする癖で培ったものなんだろう。え、嘘、それはちょっといやだな。人としての人権とは何だ、と思うばかりの暴言を浴びせられながら、奉仕のように施される愛撫は何よりも気持ちいいし、もはやこういうのもいいかもとか思っちゃうし、うーん、誰と何かをするよりも快感を得ることができる。言われてみれば押し付けるだけのセックスも嫌いじゃないし、自分勝手な乱暴も結構いいと思う。ほんとだよ、気持ちがいい。俺が好きで好きで仕方なくていつだって欲しがってるといわんばかりの精液が、しっかりと計算されたように、顔と口と腹と肛門へと、たっぷり注がれたら俺はそれだけで満足してしまう。これは知ってる、エロゲのやりすぎ。俺なんて一回も射精してねえってのに。それでも俺だけに向けられた、それが愛おしい。はいはい、らめー、らめー。

「引き籠りニートの恋人なんてダサくて嫌だろう。気持ちが悪いだろう。残念だったな、一生お前はそんなのが恋人なのだ。ふふ、そんな底辺の人間にお前は犯されているんだぞ」
「うーん、そこは別に、俺が養うからニートでも構わないんだけど、ちょっとエロゲのやりすぎじゃないかな…違う意味で腹ん中パンパンだよ」
「お前はこういうのが好きなんだろ。好きで仕方ないから毎日媚びたように俺を見つめて、俺に構い、俺を考えてアヘ顔で絶頂するんだろ」
「おいまてよ、いつ俺がアヘったよ。アヘアヘなのはお前のちんこだろ!フェラしながらダブルピースしてやろうか!」

「煩い。黙れ。ちょっと、本当に可愛くない。聞いてるのか、あ、マズイ、そろそろニコ生の時間だからもう離れろ」


体内にもう一度埋め込まれたアヘアヘがもう一度だけ溢れる。一つ一つの愛情が、俺の体の部分一つ一つに触れて、弾け飛ぶ。俺はそれだけでいい。なんだっていい。インターネットのケーブルをぶち抜いたら、また罵声が飛んできた。怒った顔も大好き。ずっとこのまま、閉鎖させて欲しい。パスワードは一つだけ、こもった季節に封鎖された世界で雨
粒のように降り注ぐ愛情を受ける小さな花びらを、すべて君に贈ってあげる。


120115

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