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ミッドナイトダーリンを追いかけて、
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続きメモ




「アイドルのHAYATOかい?おはやっほーニュースの?へえ、こりゃあ素敵なサプライズだね!」


場の空気も一緒に飲み込んでしまった覚えはない。冗談にしては少々酷だ。その場にいた寝間着姿のレン以外の仲間たちが一斉に驚きを隠せぬ表情を彼に向けたので、すぐにレンが訝しげに首を傾げた。体内の臓器が一つ消滅したような違和感に私自身、立ち尽くす。レンが服を着て大人しくベッドで寝ているなんて、と笑って見せようと思った。そして苦笑を交えて、煩わしいよ、と彼らしい返答を期待する。仲間が笑う。そして、何事も無かったと、土産の菓子に笑顔を割かせるのだ。私の考えた少しだけ特別の日常は、罪にかけられるほど大仰なものではないはず。
しかし、いつの間にか手の中の土産の袋がベッドへと転落していた。レン以外の誰もが気に留めはしない。最初に、何言ってんだよと沈黙を破ったのはやはり音也だ。時間が動き出したかのように、翔続いて聖川さんと、全員がつまらないジョークだったと、言わせたいかのように声をかけた。息さえ吐くことは許されない。私は、じっとレンの唇だけを見つめていたがやがて、その唇がぼやけてしまい立ち眩む。外側では音也の声が荒立っていくのを何となく感じてはいたのだが、酷い眩暈に耐えることは出来ず、部屋を出ようと顔を上げた時だった。

「俺には一ノ瀬トキヤなんて友人はいないし、アイドルのHAYATOと知り合いになった覚えもないよ」

彼のこういった物言いは、いつも誰かを傷付ける。こうなると、いよいよ私には呼吸する権利さえ奪われてしまう。彼の目の前に居るはずの自分は自分ではないと彼が私に告げた。しかしそれは、彼の視点での話であるから誰しもが間違いだと彼に諭す。しかし私にとっては、その烙印は絶対の正解にも近いものであった。彼の意志が、私にとっての全てに近い存在になったのは私自身しか知り得ないことだ。神宮寺レンとは、私の中でそのような対象だった。レンは恐らく気付いていた。だから、私を受け入れたのだと思う。それは、決して、勘違いだなんて思わせないで欲しい。切望だった。

「貴方は、勝手すぎる」

後ろから女生徒に突き飛ばされ、階段から足を踏み外したらしい。それは彼が学園内で大切にしていた「レディ」の行動で、まだはっきりとした動機を聞いたわけではないが大凡の予想はついており、遠い答えでもないだろう。翔から「トキヤが女から刺された!今病院!」とメールが入ったものだから、収録中は気が気でなかった。されど、集中を散漫させ何度もリテイクを重ねることは決して最善ではない。何度かのしっかりとした連絡を取り合い、メールの履歴を追ううち大体の事情は掴めた。(翔の大げさな最初のメールには小さく訂正がされていた)搬送中に気を失った、という事実は比喩ではなく本当に目の前が真っ暗になる。つまり、これで本日2度目の暗転で、どこまでこの男は私を弄べば気がすむのだろうと、憤りを超えて空しさが心を蝕む。問題がない、といった音也を責める気にはならなかった。音也が私の顔を見るや否や、蒼白な顔を浮かべていた。大丈夫です、貴方は何もしていない。言葉はしっかりと発することが出来たと思う。帰路はもう覚えていない。

レンと少しだけ特別な間柄になったのは、私が熱に浮かされた時だった。(どうかしていたといえばそこまでだ)
代わる代わる、今日の日のように仲間たちが顔を見せたが、レンのそれは様子がおかしかった。風邪に糖分はいいらしいと適当な事を口にしながら高価そうなチョコレートを差し出した。取り巻きの贈り物だと瞬時に分かる。自分の苦手なものを押し付けられていると指摘すると、悪戯が見つかった子供のように笑った。それがどうしてか、憎たらしいというか、可愛らしいというか、眉をひそめる結果となる。

「冗談はさておき、喉がやられてるとは油断しすぎじゃないか」
「自分の不注意は自分が一番分かっているつもりです」
「そうかい、HAYATOの為にもさっさと治すんだね」
「仕事には響かせません」
 
神経が張り詰めていなければ見逃してしまいそうな程、レンはいつも通りだった。言葉の端や視線の冷たさに、違和感を覚える。私を通して、誰かを叱咤しているようなそれは確信へと変わり、彼が私を寝かしつけようとする腕を拒み尋ねることにした。触れた腕は酷く冷たく、熱を帯びた己の手の体温を全て奪っていく錯覚に陥る。見上げた瞳の色がなお火照った身を涼しくさせる。言葉を詰まらせて、一度は解放を許してしまい、されどレンが然程驚いている様子でもなかったので、改めて名を呼びかけた。

「レン」
「ん?」

「何かありましたか」

「……」
「いえ、何でも…」

眩暈ばかり、与える人物だと思った。私は病人で、彼もそれを承知の上で、それで。見舞いという名の遊びか説教か(どちらかは判断しかねるが)、…とにかく私の体調の様子を伺いに来たはずなのに、これはどこからどう見ても、おかしい。冷たいのは、自分の体温が熱いからだとばかり思っていた、間違ってはいない。覆い込むように抱き締められた身体は、先ほどの涼しさが嘘のように熱していた。この人の方が風邪をひいているのでは。あるいは、私がもっと深刻なる病気を患ってしまったのか。軋むスプリングが耳鳴りのように響く。抵抗できないでいた時間は、何時間経っただろう。唇に吐息が触れ、思わず赤だの緑だの騒がしい視界から正気に戻った頭で押し退いた胸に、もはや言葉は出ない。それ以上レンも力を込めることはしない。ただ、視線が交わるだけで、レンは困ったことに私の言葉を理解してしまった。
それは一瞬のことで、先ほどまで散らばっていた色とりどりの眩暈の中へ強引に引き戻したかと思えば、油断で乾いた唇がすぐに潤いを取り戻す。次は、思い切って拒むことが出来ずに目を瞑る抵抗しか術はない。薄く開かれた隙間を何かのメロディーのように埋めていく。それは冷たくて、熱くて、でも温くはない、不思議な感覚だ。歌にするのなら、恐らくこの男そのもの。何も考え付かなくなる、奥歯が痺れて閉口を許さない。唾液が顎をだらしなく伝うのは不快であるはずなのに、後頭部でかく汗でさえも気にはならない。掴んでいた腕に、しがみついているようだったので、ようやく瞳を開いて手を離す。パノラマのような眩い光にもバランスを崩すことはなく、酸素の行き届かない脳も揺れはしない。くしゃくしゃと頭をかき撫でる手付きで体を支えられた。意識があるのなら、手慣れたものだと嫌悪してもよいようなものなのに、それどころか求めてしまいそうになる。蝕まれた後は、自分の呼吸の音で他の音が何一つ聞こえなくなった。こんな時ばかり、優しく撫でる手付きはどうにかならないものだろうか。

「早く治せよ」
「…ええ、貴方に心配されずとも」
「そこまで悪態つければ問題ないね」
 
 
^q^キスがねばっこい神宮寺がすき。ねれねーよwwwwwwwwwwwwww明日は仕事中トキヤさんのことだけ考えている。

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